「多国籍相乗り」と申し上げても、ちょっと説明がいるかもしれない。まず、待機所に来たカナダ人の若いカップルの案内を始めた。本丸庭園で、松本城の概略を説明していると、すぐ近くで、別の若い外国男性二人が、こちらに耳を傾けている。そこで、合流するよう声をかけた。オランダ人であった。お城に向かって歩いていると、今度はドイツ人の若い男女カップルが私に声をかけてきたので、これも歓迎した。つまり「多国籍相乗りガイド」のスタートである。
城内では、共通のガイドに加えて、それぞれの国に絞った、軽いピンポイント・サービスもした。カナダカップルには、以前別のカナダ人からもらったジョークを使った。そのカナダ人に、私が貴国にはお城があるかと聞いたら、「あるよ。ニューキャッスルだ」といって、私を笑わせた。彼は、お城と自国の都市名をかけたのだ。今回も、この逸話が一働きしてくれた。オランダ人には、天守2階の一番奥にある「船載砲」の話。中世、地中海で活躍したオランダ軍艦に積載されていた代物である。ドイツ人には、火縄銃が15世紀前半にヨーロッパで発明されて、おもにドイツで改良された話(Whikipedia)を付け加えた。
そのドイツは、英・仏・伊などと並んで、名城・古城が多い。それだけにドイツ青年は、松本城に、かなりの興味を示して、何かと質問してきた。できるだけ丁寧に答えながらも、他のグループが気にかかる。急いで、他のグループに追いつく度に、彼らは、何か語り合いながら、辛抱強く待っていてくれた。そして、最後は、世界共通の話題,つまりお酒の出番である。「They could enjoy three moons at one time.」のジョークを紹介すると、彼らは、そろって高笑していた。そのあと、カナダ人は、オランダ人に「Nice meeting you.」と言って別れの握手をしている。実は、彼らは、私がドイツ人に説明している間、つかの間の国際交流を楽しんでいたのだ。
多国籍相乗りガイドは、ちょっとした工夫が要るだけに、快い緊張感もある。また、時には、国際交流のお手伝いをできる。こうした非日常的なガイドもいいものだ。